Beeworks Thoughtful design

学習意欲を呼び覚ます「面白さ」を実現。クリエイティビティを最大限に発揮できた信頼関係とは

member
  • 株式会社村田製作所D.H 様
  • 株式会社村田製作所R.S 様
  • 株式会社村田製作所M.K 様

  • ビーワークス
    ディレクター
    平野
  • ビーワークス
    デザイナー
    川野
  • ビーワークス
    エンジニア

概要

電子部品の分野で世界をリードする株式会社村田製作所(新しいウィンドウが開きます)。小中学校で出前授業を行うなど、日本のSTEAM教育の活性化にも力を注いでいる。その取り組みのひとつが、電子部品の機能や用途を学べるサイト「ハッケン!デンシランド(新しいウィンドウが開きます)」。ビーワークスはサイト立ち上げ時からコンテンツ企画・制作を手がけている。サイトを運営する村田製作所 広報部ブランド・コミュニケーション課のD.H様、R.S様、M.K様と、ビーワークス制作チームのディレクター・平野、エンジニア・岸、デザイナー・川野が、立ち上げまでの経緯や制作時のエピソードについて語り合った。

子どもたちに興味を持ってもらうために
ワクワク感を重視したサイト

村田製作所様のSTEAM教育に関する取り組みについて、具体的に教えてください。

D.H
D.Hエレクトロニクス事業を手がけるメーカーとして、「理科が好きな子どもを増やすことで、未来を担うモノづくり人材育成に貢献したい」という思いのもと、さまざまな教育関連活動を行っています。たとえば、2006年から行っている「出前授業」です。小中学校へ出向いて、ムラタセイサク君などのロボットの開発過程を紹介し、モノづくりを支える技術者の仕事や面白さを知ってもらったり、手回し発電機でコンデンサへの蓄電や違った負荷につなぎ、消費電力の差を体験することで電気エネルギーと環境との相関関係を考えるきっかけを作ったりなど、日本のSTEAM教育の一端を担っています。
R.S
R.S子ども向け科学体験施設「Mulabo! (ムラーボ!)」もそのひとつです。村田製作所みなとみらいイノベーションセンターの建設を機に、子どもたちに科学に触れてもらう場としてMulabo!を作りました。STEAM教育関連活動で共通しているのは、理科やエンジニアという仕事に興味を持つきっかけを提供すること。子どもたちが、ただ出前授業を楽しんだり、Mulabo!で遊んだりしているうちに、自然とコンデンサやコイルという言葉に馴染んでいく、そういう機会を作りたいと思っています。
※左から、M.K様、R.S様、D.H様。シャイなためアイコンで顔を隠しております。

「ハッケン!デンシランド」を立ち上げた目的は?

D.H
D.Hこれまで実施してきた出前授業などの「少数に向けた深い体験コンテンツ」に、デンシランドという「多数に向けた繰り返し楽しく学べる体験コンテンツ」を加え、両輪で学習環境を提供したいと考えました。それによってさらなるSTEAM教育活動の充実を図り、次世代を担う子どもたちにエレクトロニクスや科学の面白さを伝えていくことが目的です。
平野
平野ムラタさんからは「理科に興味を持っている子が、好きな気持ちをもっと膨らませられるサイトを作りたい」というご相談もいただきました。小学校高学年生がメインターゲットなのですが、出前授業を受けて理科に興味を持った子どもが、家に帰って「もっと詳しく知りたい!」と思ったときの受け皿となるサイトが必要だったのです。……ただ、オリエンで一番印象に残っているのは、Hさんの個人的な思いが綴られたスライドですね。「おっ、ムラタすごいやん、面白いやん、と思われたいです!」という言葉を覚えています。
D.H
D.Hもちろんそれ以外のスライドもしっかり作りましたよ!(笑)。でも、一言で言うとそういうことだったんですよね。特に、こういう子ども向けのコンテンツではワクワク感が大切。楽しくなければ興味を持ってもらえませんから、その部分はすごく重視しています。
平野
平野あのスライドがあったからこそ、「面白い!」を表現する力が求められているんだと強く意識しました。電子部品の魅力を正確に伝えることと、面白さ。このふたつを両立できるサイトの提案をしなければ、と思いました。
※左から、平野、岸、川野。ビーワークスメンバーもシャイなのでアイコンで顔を隠しております。

発注の決め手はコンセプトと人
内容を具現化する力を感じた

村田製作所の皆さんは、ビーワークスからのサイトの提案内容にどのような印象を持ちましたか?

R.S
R.S提案いただいた「デンシランド」という名称やコンセプトが響きました。電子部品の堅いイメージを嚙み砕いたサイトを作っていただけそうだと感じましたね。面白いことをしたいというこちらの思いをくみ取ってもらえていると思いました。
提案時の資料より。サイト名やコンセプトに込めた思いなど、思い描く世界観を丁寧に共有した
D.H
D.Hご紹介いただいた制作メンバーも印象的でした。これは面白いことを考えてくれるメンバーだな、と。どんなにいい会社さんでも、実際に制作する方々によっては提案内容とズレが生じることがあるので、制作メンバーって重要なんですよね。ビーワークスさんの場合は、オリエンした内容に対するベストなメンバーなんじゃないかと思えました。
平野
平野ありがとうございます。エンジニアやデザイナーとしてのスキルはもちろんですが、今回のターゲットに響くアイデアを考えられるであろうメンバーを集めました。エンジニアの岸は、学生のときからSTEAM教育に近い取り組みをしていたんですよ。
大学のサークルで、小学校で理科の工作教室をする活動をしていたんです。その後コロナ禍に入ってからも、個人的にサイエンスショーの動画を作ってYouTubeに公開していました。自分は情報工学を学んでいたんですが、電子部品も好きだったので、その経験や知識を活かせるプロジェクトだと思って参加しました。
川野
川野私は「ロジカルとコミカルのマリアージュ」というキャッチコピーを自分に付けていまして。理系のテーマでありつつ面白さが求められるこのプロジェクトでは、自分の強みが発揮できると思いました。提案内容で発注を決めたけれど実際は思ったほどのパフォーマンスじゃなかった、なんてことがないように、ビーワークスでは提案段階から「このメンバーで作ります」と伝えることが多いですね。

ビーワークスに発注をした最大の決め手は何でしたか?

R.S
R.S子どもが電子部品を面白く理解するためのステップを用意してくださって、その各段階での最適なコンテンツを提案していただけたことです。同時に、将来的な展開として、より理科を好きになってもらうゲームコンテンツなどの踏み込んだ提案があったのも良かったです。実際、前倒しでゲームコンテンツの「デンシアドベンチャー」を作ることになりました。
平野
平野ワクワク感の部分はデザインサンプルなどで視覚的に提案しつつ、コンテンツ内容はきっちりロジックを立てて提案しましたね。興味のレベルをステップアップさせるためには、どの層にどういうコンテンツがあったほうがいいのか、抜け漏れなく検討しました。それに、作って終わりではなく展開していくサイトだと考えていたので、ゆくゆくは加えていくべきコンテンツもあわせて提案しました。
提案時の資料より。ロゴやキービジュアルは提案時の方針をほぼそのまま採用(左)。
ユーザーの意欲が高まっていくフェーズを整理し、フェーズ別に必要なコンテンツを提案した(右)
D.H
D.H私としては、やっぱり「デンシランド」という名前とコンセプトですね。子どもに電子部品のことを面白く伝えたいという意図をまさにくみ取ったものだったので、すぐ「あ、これ、いけるんじゃない?」っていう感覚でした。
「ランド」はテーマパークのような意味もあるけど、基板の端子を接続するドーナツ型の部分のところをランドと言いますよね。電子部品の世界と子どもをつなぐ場所という意味も重ねて「デンシランド」という名前がぴったりだと思い提案しました。
平野
平野基板の「ランド」の意味を知った瞬間、完璧じゃん!って(笑)。弊社内では、すぐ「これでいこう」とまとまりましたね。

わかりやすく、かつ正確に伝わる表現を考え抜く

制作段階で苦労したことや、大変だったエピソードを教えてください。

R.S
R.S「電子部品ライブラリ」という、電子部品を紹介するページの表現が難しかったです。小学生に面白く伝えるためには、電子部品を理解した上で、わかりやすく噛み砕かないといけません。ムラタは理系の会社なので、正確な表現をすることはできるのですが、噛み砕くのが得意な人ばかりではなくて。ビーワークスさんからは、面白くするためのちょっと攻めた表現や、わかりやすさを優先したシンプルな文章を提案いただきました。一方で、ムラタとしては電子部品について正確に伝える責任がありますから、わかりやすい省略に対しても慎重になります。そういう社内とビーワークスさんとのやり取りを何度も繰り返してできあがったのが、電子部品ライブラリです。自分ではあそこまで思い切った文章は考えられなかったので、毎回いいコピーや文章を用意してくださってありがたかったですね。ビーワークスさんがいて良かった~って思いました(笑)。
平野
平野京都の本社に直接うかがって、表現を監修する方とも顔をあわせながら文章を練りましたね。「ここはこうしたほうがわかりやすい」「しかしそれだと正確ではない」のようなやり取りを重ね、最適な表現を考えました。まさに二人三脚で作ることができたという印象です。
「電子部品ライブラリ」より。キャッチコピーや説明文に遊び心を持たせ、親しみある印象に
ライブラリコンテンツの説明の合間にある3択クイズは「一度考えさせるフェーズを挟むことで子どもがより理解しやすくなるんじゃないか」というアイデアで提案しました。あとは、子どもが読みやすいように漢字にルビをつけているのですが、電子部品を擬人化したキャッチコピーをつけるときにその機能も活用できましたね。たとえばノイズフィルタの説明では「守護神」と書いて、ルビで「ガーディアン」と入れています。
R.S
R.Sそれに、川野さんのデザインのおかげで電子部品の見た目もキャラ立ちしましたよね。電子部品に親しみを持てるサイトになったと思います。

「自由にクリエイティビティを発揮してもらいたかった」
クオリティアップに注力した制作プロセス

D.H
D.Hこれは苦労ではないんですけど、ビーワークスさんに自由にクリエイティビティを発揮してもらうことは意識しました。注文側はいろいろ口出ししたくなってしまうものですけど、そういうコミュニケーションに時間を割くのではなくて、スキルを持ち寄って一番良いものを作ることに集中していただきたくて。細かく指示することはせず最低限の枠だけご提供して、あとは自由に踊ってくださいと(笑)。今回は特に、しっかりしたエンジニアとデザイナーの方が最初からプロジェクトに入って連携して進めてくださったので、安心してお任せできました。
川野
川野任せていただけたのはすごくありがたかったです!アウトプットを委ねられている雰囲気があったからこそ、社内で「こうしたほうがもっと良くなるのではないか」というブラッシュアップをぎりぎりまで詰めて提案できたと思います。弊社は制作に関わる職種が揃っているので、阿吽の呼吸で仕事を進めることも多いです。原稿やデザイン、インタラクションに至るまで、「ここはわかりづらい」とお互いの工程にフィードバックしあうことで、良いものが生まれていったと思います。
D.H
D.Hムラタ側からは、起爆剤的なものだけは何とかひねり出そうとがんばりました。それをお渡ししたら、あとは膨らましてくれるんちゃうか、と。そういうスタンスも良かったのかもしれないですね。
川野
川野そうですね。任せていただきつつも、これは外したくないという部分は提示いただけて助かりました。たとえば、ゲームコンテンツの「デンシアドベンチャー」では、電子部品があるときとないときの差をわかりやすくしたい、電子回路の中で電子部品が機能するといいことが起きると伝えたい、というしっかりとした意図があったので、それが部品をパズルではめるアイデアにつながりました。そういうキーワードが企画の指針になりましたね。
M.K
M.K私はデンシアドベンチャーの制作からこのプロジェクトに入ったんですけど、ストーリーの面白さと現実のバランスは考えました。電子部品の不具合でお困りごとが起きるシナリオなのですが、事故を想起するような過剰な表現にならないように気を付けたいということをお伝えしました。結果的にバランスよく、しかもわかりやすく作っていただけたので良かったです。
ゲームを楽しみながら電子部品の理解を深められるコンテンツ「デンシアドベンチャー」

新しい取り組みは社内でも好評
今後より多くの人へ広めていく

「ハッケン!デンシランド」への社内外の反響はいかがですか?

M.K
M.K社内では、「面白い」とか「こういうの今までなかったよね」っていう声が一番多いですね。今までも子ども向けのコンテンツとか冊子を作ってきたんですけど、少し難しい内容になっていたので、個人的にも「デンシランド」はムラタとして大きなチャレンジだなと思いました。でも、ユーモアも交えて電子部品の魅力を伝えていただいて、「難しいものをこんなに面白くしてもらえるんだ!」って、プロの仕事を見せてもらったと思いましたね。
D.H
D.H特に新しい取り組みへの感度が高い部署からはとても好評です。実はムラタって、電子部品に詳しい人ばかりではなくて。そういう社員が、昇格試験のときやお客さんと話す前に、デンシランドで電子部品について学んでいるようです。
R.S
R.S親子でデンシランドを使った社員から感想をもらうんですけど、「まさか子どもがコンデンサという名前を認識してくれるとは!」と喜んでいて。子どもにどんな仕事をしてるか伝えやすくなったという声もあって、わかりやすく伝えることがこんなところでも役立ってると思うと、嬉しいですね。
インタラクティブな操作や、わかりやすさを意識して制作

デンシランドのコンテンツはこれからも増やしていくのでしょうか?

D.H
D.H基本的な枠組みはできたので、次はそれを広げるフェーズに入って発展させていくつもりです。
平野
平野外国語展開も見据えた作りになっていますし、自由研究のアイデアを教えるコンテンツや、より興味を持った人が楽しめるツールも検討したいと思います。
D.H
D.H個人的な思いとしては、もともと教育を理系や文系と分けるのは好きではなくて、一緒だと思っているんです。STEAM教育という言葉にも、リベラルアーツやアートを指す「A」が入っていますよね。「デンシランド」のようなプロジェクトを通して、ムラタのSTEAM教育への取り組み全体にも、そういう匂いを入れていきたいです。理工学もすべて人間を相手にしていて、伝える手段を考えるのは人文科学の分野ですから。ムラタは理系色が強い会社ですけど、それらをすべて一緒にした形で、でも理科にもちょっと興味を持ってねというスタンスで、子どもたちにモノづくりの面白さを伝えられたらいいなと思っています。
平野
平野デンシランドのコンテンツ拡充や流入施策だけでなく、STEAM教育に関わるプロジェクトがあれば、他にもぜひお手伝いしたいと思っています!本日はありがとうございました。

公開日:2023/3/8

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